2024年衆議院議員選挙 2024年10月31日

今回の衆議院選挙前に考えたことは、6月から始まった減税の影響がどのような効果を現すかと、その減税が自民党裏金問題をどの程度まで忘れさせるかであった。一年間で納税者と配偶者、子ども2人の家庭なら計16万円の減税となる。一カ月に所得税住民税合わせて16万円支払っている人など限られているから、通常16万円に達するまで毎月所得税住民税0円が続く。これが自民党が支持拡大を目論んで使う常套手段の給付金支給であったら、一回で終わってしまうから、その影響はすぐに忘れ去られてしまう。そこで減税が延々と続くかのように国民に錯覚させるために今回のような減税方法がとられたのは明白だ。給料明細に減税額を明記しろとのダメ押しの命令まで出した。毎日の買い物の支払い金額が、目に見えて増え続けていることを実感している主婦にとっては、夫の給料から差し引かれる税金が毎月0円効果によって、毎月の支払い増加傾向に対する不満が緩和される。その効果で主婦には裏金問題など気にすることではなくなる。裏金問題など我が家の家計には全く関係ないことだ、と思うだろう。その影響は有権者の自民党支持が増えるのではなく、有権者が選挙を棄権する方に働くだろうと予想した。中江兆民が120年以上も前に指摘した日本国民の特性である「利害に明にして理義に暗し」は今もって全く変わらないだろう。裏金問題は家計の収入に全く関係ないが、税金の減額は得した気分になる。ただそれだけだから、面倒な投票など行く気がしない。選挙結果は予想通り投票率の前回からの減少となった。

自民党の裏金問題は、2022年11月に日本共産党のしんぶん赤旗で報道され、2023年11月に読売新聞やNHKなどのメディアが報じたことにより表面化した、ということだ。多くの国民が裏金問題を知るまでに、なんと一年もかかったのである。絶対安定多数を擁する自公政権の自民党の不祥事で、しかも発覚したのがしんぶん赤旗紙上であったから、メディアはこれを無視し取り上げなかった。またメディアに自民党に対しての忖度が働いて、報道を自粛した。神戸学院大学の上脇博之教授が東京地検に告発しなければ、自民党からの陰に陽の圧力で、この裏金問題が世間に知られることにはならなかったに違いない。さらに赤旗紙上で自民党が非公認候補者が代表を務める党支部に、しかも衆議院選挙公示直後に2000万円を支給したことが報じられ有権者の脳裏に裏金問題を蘇らせた。称賛されるべきなのは、しんぶん赤旗とそれをきっかけとして裏金問題を精査し告発し続けた上脇教授のたぐいまれな勇気と努力である。殊に立憲民主党・国民民主党の議席増は、赤旗や上脇教授の努力の成果にただ乗りしただけで、党の政策が支持されたわけでも何でもないことを両党は肝に銘ずるべきである。

選挙の結果は自民党が50議席ほど減、自民公明合わせて60議席ほどの減に過ぎなかった。メディアは連日裏金問題を騒ぎ続けたが、自民党の議席はたったの20%程度減っただけであった。与党大幅議席減などと報道していたが笑止千万であった。立憲民主党の比例代表得票数は前回よりたったの7万票増えただけである。略称を国民民主党と同じ「民主党」で前回同様変えなかったのは、口を開けば政権交代と言っていたのと裏腹に、政権を獲得する意気込みがなかったからだろう。国民民主党とごっちゃにして有権者を馬鹿にしているにも程がある。立憲民主党の野田代表の中道保守の姿勢が支持されたなんて寝ぼけたことを言う人がいるが、比例代表得票数をみれば、これまた笑止千万である。自民党のカネに対する批判票が立憲民主党・国民民主党に流れただけで、党の政策が支持されたのでは全くないのは明らかだ。思い上がっていれば次回選挙で元に戻るどころか大幅減になると覚悟したほうが良い。

今回の選挙がイギリスであったなら、自民党の議席は半分以下になって即政権政党が交替したであろう。イギリスは国民の良識が働く国である。日本のように国民の良識自体があるのかさえ疑わしい国とは、国民の質が違う。議会制民主主義に対する教育を徹底している国と、自民党支配を持続させるために、議会制民主主義の役割をまともに教えようとしない自民党支配の教育政策との違いが、国民の質の違いを生み出している根本原因である。政治のことは教育で取り上げないようにして、国民が政治的要求を持たないようにし、自民党支配を恒久化しようと図った教育政策が二人に一人しか投票しない国民を生み出したのだ。由らしむべし知らしむべからず。ドイツは敗戦によって、民主主義の徹底を、教科書を変えることによって達成しようとしてきたが、日本は一政党の支配を継続するために、民主主義をごまかす教育を続けている恥ずべき国である。

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