ハロー効果2023年9月24日

人間が人物や状況の評価をするときに頻繁に見受けられる重要なバイアスの一つに「ハロー効果」というのがある。「もしあなたが大統領の政治手法を好ましく思っているとしたら、大統領の容姿や声も好きである可能性が高い。このように、ある人のすべてを、自分の目で確かめてもいないことまで含めて好ましく思う(または全部を嫌いになる)傾向は、ハロー効果として知られる。後光効果とも言う。」[以下全て「」内は{ファスト&スロー} ダニエル・カーネマン ハヤカワ文庫からの引用] 「ある人のたった一つの目立つ特徴についての判断に、すべての資質に対する評価を一致させるように仕向けるのがハロー効果」である。「たとえばあるピッチャーが精悍な顔つきの大男だと、きっとすごい球を投げるだろうと考えやすい。」 「ある選手が軟弱な顔立ちだと感じると、運動能力まで過小評価しがちである。ハロー効果は、よい人間のやることはすべてよく、悪い人間のやることはすべて悪い、という具合に、評価に過剰な一貫性を持たせる働きをする。」 心理学者のソロモン・アッシュは次のような実験で、第一印象で抱いた感情で解釈が左右されやすいことを示した。「二人の人物に関する次のような説明を提示してどちらが好きか言ってもらう。さて読者は、アランかベンか、どちらがお好きだろうか。 アラン:頭がいいい、勤勉、直情的、批判的、頑固、嫉妬深い  ベン:嫉妬深い、頑固、批判的、直情的、勤勉、頭がいい  もしあなたが大多数の人と同じなら、ベンよりアランのほうがずっと好きだろう。最初のほうに挙げられた性質は、後のほうで挙げられた性質の意味すら変えてしまう。」 何のことはない。ベンの説明はアランの説明の順序をひっくり返しただけである! ダニエル・カーネマンのファスト&スローは、事ある毎に読み返す価値のある素晴らしい本である。この本に出会えたことは、私の人生での幸運の一つである。『政策さえ良ければ有権者は支持してくれる』なんて素朴に考えている野党の人は、この本を熟読すべきである。選挙戦術に関して、素晴らしいヒントを、これでもかこれでもかと教えてくれる。政権を獲得するための戦術に関して、絶対に必要な事柄を教えてくれる。孫氏の兵法のような本である。

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