カンヌ映画祭と公共トイレ清掃の現実2023年6月24日

公共トイレの清掃をしている人の話を紹介しよう。

「公園のトイレとかがほとんどです。この仕事を始めてから12年くらいになるでしょうか。前任者がやめてしまい、担当してくれる人が見つからなくて、あたしにお鉢が回ってきたわけですが、担当してくれと言われた時には、滅茶苦茶気分が落ち込みました。公共トイレなんて呼んでいますが、ちょっと前までは公衆便所と呼ばれていたわけで、汚い場所の代名詞のようなもんですから。でも即嫌だとは言えません。金を稼がないと生活できませんから。2~3カ月やってみて何か理由をつけてやめればいいや、てな考えで始めました。始めたころのトイレの汚さは想像を絶するほどで、豚小屋か、イノシシでもやってきて暴れた後か、と思ったくらいです。豚小屋って知ってますか?あたしの子供のころには、近くに豚が一頭だけ入っている小さな豚小屋があちこちにあったもんです。あまり汚れていないトイレもありましたが、そんなところは20%くらいでしょうか。あまりの汚さにあきれ果てて、すぐにやめてしまう人がほとんどなのも合点がいきました。あたし自身1週間くらいやってみて、こんなのやってられるか!と何度も思いましたもんです。6畳くらいの広さのトイレの床が糞だらけなんてこともありました。あんた想像できますか?どうやって掃除したらいいかと途方にくれましたが、同時にどうしたらこんな状態にできるのか、ぜひともどうやったのかを聞いてみたいとも思いました。汚し方のすさまじさに思わず感心!してしまったです。2~3カ月でやめなかった理由ですか?金を稼がなければ食っていけないから、なかなかやめると言い出せなかったのが一番の理由ですが、こうみえても根性だけはあるほうなんです。意地もありました。こんちくしょう、こんちくしょうと心の中で叫びながら掃除をしていたもんです。言葉は悪いですが、極端に言えばどこの馬の骨かわからない奴らが使っているんだから、公共トイレなんて「なんでもあり」の場所なんです。使用済みのオムツが一か所に10枚も捨てられてたことがあります。誰かが一人捨てると、すぐマネして捨てる奴が出てくる。捨てられているのを見ると勇気!が出てくるんですね。あたしも捨ててしまえ!と思う奴が次々と出てくる、てな次第で、あっという間に使用済みオムツの山ができてしまうんです。赤ん坊のオムツだけじゃない。大人のオムツもあるんです。これには困った。なんせ無茶苦茶臭い。ビニールに包んで捨てられているならまだましなんだが、むき出しのまま捨てる奴がいる。ビニール袋を二重にして、きっちり密閉したうえでごみ袋に入れるんですが、車の中に臭いが染みついてしまうんです。公園のトイレの主な利用者は誰だと思いますか?公園に遊びに来る子供やそのママパパじゃないですよ。この辺の公共トイレの利用者の多くは、運送屋の運転手、特に県外から来る長距離ドライバーや県内県外の外回りの営業をしている人たち、郵便配達の人やヤクルトおばさんもいます。意外なのはご近所さん。なんせ掃除はいらない、ペーパーもいらない、下水料も支払う必要がない、で日常の用足しに利用しているご近所さんもいるんです。驚いてしまうのは、トイレの中で飲み食いしている奴がいることです。そこらのコンビニで食料品や飲み物、酒を仕入れてきて、トイレに鍵をかけて、中で飲み食いして何時間も出てこない。トイレの中に食べ残し、飲み残し、包装袋、空き缶、空き瓶、空きペットボトルが散乱し、床に残りかすがへばりついている。床にへばりつくのはガムだけじゃないんです。犬の糞が散乱していることもあります。ペットの犬の糞の始末もできない奴が結構いますから。中にはペットの犬専用のトイレに特化しているような所さえあるんです。髭剃りのような刃物もよく捨てられています。トイレの中で髭をそっているんですね。公園に遊びに来る子供が怪我しないかとひやひやします。大便器にいろいろなものを押し込んで詰まらせる奴が結構いました。今でも時々いますが。押し込むものはそれこそ様々です。トイレットペーパーを一巻き丸ごと押し込んだり、パンツや、なかにはタイツさえ押し込んで便器を詰まらせる奴もいます。パンツの国籍はさまざまで、もちろん英語版もあります。缶コーヒーの缶さえ押し込む奴もいるんです。水を流すためのタンクがあるでしょう。あの中に下着なんかを詰め込んで水が流れないようにする奴もいます。糞の入ったパンツを転がしておく奴もいます。畳二畳くらいの小さなトイレもありますが、その中にあらゆるものを放り込んで、ごみ箱の代わりにしている奴もいます。かたづけてもかたづけても次から次へと放り込んでくるのでイタチごっこです。これなどれっきとした犯罪だと思うんですが、役所はごみ捨て禁止の看板を立てるくらいで、捨てる奴は全く気にしません。トイレじゃないですが、公園に設置してある自動販売機の回収箱の所なんぞは、ごみの山ですね。あんまりひどいと、販売業者は自動販売機を撤去してしまいます。ごみ処理費用で大赤字になってしまうんでしょうね。ごみ捨て場になってしまうような小さなトイレは撤去してしまえばいいと、あたしなんぞは思うんですが、そうはいかないようです。トイレットペーパーを持っていく奴も結構います。公園を散歩している人に、あそこの公園のトイレで、ペーパーを持っていく人を見ましたよ、なんて報告されたこともあります。公共トイレはあたしに言わせてもらえれば「人間の醜悪さの吹き溜まり」ってなもんでしょうか。カンヌ映画祭ってのはどういうのか知りませんが、公共トイレなんて所はとても映画の舞台になるような所じゃないと思いますよ。コロナが発生してから、感染しないかとずっとびくびくしながら掃除しています。感染してしまったら食べていけません。公共トイレを利用する人は様々なところから来るから、ウイルスを避けるなんて不可能です。消毒を徹底することしか対策がありません。マスクをしていない人がずいぶん増えました。感染状況を発表しなくなったので、状況が全く分からなくなりました。政府は何を考えているんですかね。自分たちは感染してもすぐに治療してもらえるから、みんなもそうだと思っているんでしょうか。勝手なものです。何か良いことはないか、ですか?言葉通りの糞のような仕事を、こんちくしょう、こんちくしょうと心の中で叫びながら続けて4~5年くらいたったころでしょうか。汚れが少なくなってきたことに気づいたんです。イノシシが暴れた後のような所がなくなりました。どうしてなんでしょう?きれいになっていると汚しづらいんでしょうか?ごみが捨てられてそのままになっていると、そこにごみを捨てる奴が次々と出てきて、すぐにごみの山ができてしまいますが、きれいになっていると、汚しづらいんでしょうか?マナーが向上したんでしょうか? それと、掃除していてもまったく気にせず、無言でトイレに入ってきて、いつまでも出てこない奴が結構いましたが、最近はそういう奴は少なくなりました。使わせてもらいますよ。入っても大丈夫ですか。邪魔して悪いですね。ごくろうさんです。なんて声をかける人が半分くらいいるようになりました。声を掛けられると何となくうれしいですね。思わず大声で、どうぞどうぞと言ってしまいます。」

タイトルとURLをコピーしました