米国CPIの意味するもの2023年3月5日

毎月10日過ぎに米国CPIが発表され、株価その他の市況に少なからず影響を及ぼす。2月に発表された1月のCPIは前年比(2022年比)6.4%の上昇であった。去年(2022年)7月に発表された前月6月の前年比(2021年比)上昇率9.1%以降、前年比上昇率は下降し始め、月を追って下げ傾向を持続している。そのことが、物価上昇が鈍ってきたと喧伝され、市場は概ね好感する形になっている。軽薄な報道機関は、物価が下がってきたと、経済知識のない人々に勘違いさせるような報道さえしている。2月の前年比6.4%という数字は、前年の上昇率と比較しなければ全く意味をなさない。2022年1月の前年比(2021年比)上昇率は7.5%であった。したがって2023年1月は、2021年1月より13.9%上昇したことになる。去年(2022年)6月の9.1%の上昇率は、2021年6月の前年比(2020年比)上昇率が5.4%だったので、2020年より14.5%の上昇である。今年1月の上昇率は、去年6月のピーク時とほとんど変わっていないということだ。正確を期するには、前月比上昇率を計算に入れなければならないが、物価上昇の概略な傾向はわかるだろう。前年比6.4%だけを取り上げて、どうのこうのいった手の、人々を勘違いさせる報道がしょっちゅうなされて政治的に利用されている。騙されないように注意すべきなのだ。

この手の報道に防衛費増額問題がある。ロシア中国北朝鮮の脅威が毎日間断なく報道されているから、多くの国民は防衛費大幅増額の自民党政権の政策を容認しているようだ。コマーシャル効果である。この手の報道の大きな欠陥は、日本の軍事力の現水準に関する報道が全くされていないということだ。日本の軍備が足りないから大幅に増額するというのであれば、現段階の日本の軍備の程度がわからなければ、国民には足りないかどうかなどわかるわけがない。それなのに日本の軍事力の程度がどのくらいなのかを示さないで、防衛費増額の必要性だけが喧伝されているだけでなく、あまつさえ増額分を増税で賄いたいので国民に理解してもらいたいなどと平然と言っている。国の軍事力の程度を明らかにすれば、敵に手の内を知られることになるから、重大な極秘事項として報道機関は自己規制しているのだろうが、浅はか至極である。米国の偵察衛星は地上の15㎝程度のものさえ識別する能力があると言われている。偵察能力はその国の軍事上の根幹をなす極秘事項であるから、表に出ることは決してないが、そんなことでもネットで調べれば簡単にわかる。戦闘機や戦車やミサイルや戦艦などをすべて格納する場所などないから、偵察衛星を使えば、その国の軍備の概略を知ることなどさして難しいことではないだろう。ある国の軍備の程度はこのくらいだなんて発表すれば、発表した国の偵察能力を公表するに等しいから、しないだけの話である。知ろうとすれば簡単にわかることをなぜ報道しないのだろうか。防衛費増額のたたき台になる現段階の軍事力の程度を国民が知らないのに、防衛費大幅増額予算が可決された。日本は全く不思議な国である。

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