一度上がった価格はまず下がらないのが普通である。価格が下がらなければ、増税されているのと同じだから、前代未聞の円安政策で潤っている一部の者たち以外は、生活が苦しくなるのは当たり前だ。私の買っている牛乳は、去年11月から今年10月までに30%上昇している。その主因として言われているのは、ロシアウクライナ戦争の影響で、飼料の原料となる穀物価格が大幅に上昇したからということになっているが、以前述べたように穀物価格が上昇したのは、戦争が始まってから数カ月の間で、その後は下がり出して、今では戦争開始前より下がっている。おまけに、値上げに国民の拒否反応が案外少ないとわかって、次々とあらゆる業種で値上げが続出している。値上げはサービス価格に波及し、一例をあげれば、NTTは二年契約すると割引していた通信料の割引を取りやめ、付与していたポイントも取りやめるだけでなく、各種工事費も引き上げると通知してきた。9月の実質賃金は去年の同じ月と比べて2.4%減少し、18か月連続でマイナスとなった。こんな状況で政権が安泰な日本は、世界の七不思議と言うべき世界の珍現象だろう。
今回は原油の価格推移をみよう。日本の物価上昇が、ロシアウクライナ戦争の影響などではさらさらなく、自民党政権と日本銀行による前代未聞の円安誘導政策の結果であることが、原油価格の推移でさらに明らかになる。
日本の原油価格はWTIではなくドバイ原油である。戦争が始まる前の2022年1月のドバイ原油価格は1バレル83ドルほどであった。戦争が始まって1カ月後1バレル115ドルほどになり、上げ幅30%ほどになった。その後2カ月くらい105ドル前後で推移し、5月末から上げ出して6月頭には118ドル台となった。そこが最高値となってその後下げだし、8月には90ドル台まで下落した。9月10月と90ドル台で推移していたが、11月になると80ドル台12月70ドル台となり、今年1月に80ドル台に戻ったが、3月後半には70ドル台となった。4月に80ドル台に上がったが、5月6月は再び70ドル台に下がり、7月8月は80ドル台に上がって、OPECプラスの減産決定で9月に90ドル台に上がった。その時は100ドル以上に値上がりするのは必定と騒いでいたが、サウジサラビアとロシアの減産継続発表にもかかわらず、予想とは逆に現在は80ドル台になっている。以上見ての通り日本の原油価格であるドバイ原油は、戦争前とほぼ同水準なのだ。この間円ドル相場は115円から149円と30%値下がりし、食品その他あらゆる輸入品の値上げの根本的原因となっている。国民多数を苦しめている食料品の値上がりを止めるには、円安を作り出しているマイナス金利をやめればよい。国民の借金を増やすだけで、自民党政権の延命策の減税などする必要など全くない。