中国元の国際決済におけるシェアは、年々高まっているがいまだ3%程度であり、米国ドルは趨勢的に低下しているとはいえ40%を超えている。米国ドルの基軸通貨としての地位は、揺らいでいない。シェールオイルの開発によって、米国は世界最大の産油国にのし上がった。米国経済は、燃料を自給できるようになって一層強化された。急激な政策金利引き上げにもかかわらず、個人消費はいたって旺盛で、GDPを引き上げている。単なるぺらぺらの紙に過ぎないドル紙幣が、世界で使用されているのは、米国ドルが世界で信用されているからであり、信用されているのは、米国の経済力と軍事力が信用されているからである。中国元がシェアを高めて、米国ドルの支配する世界を変えるには、中国の信用を高める以外に方法はない。ところが、中国のここ数年の行動は、信用を高めるのではなく、信用を貶めるように見えるのはどうしてなのか。中国の国会である全国人民代表大会の常務委員会は、24日愛国主義教育を制度化する法案を可決した。学校から家庭、企業まで全国民が対象である。そもそも愛国の精神は、上から教育するものではなく、下から湧き上がってくるものだろう。愛国精神の強要は、日本の戦中の軍国主義のような状況で行われるものであり、中国の経済力、軍事力からして、現在の中国が喫緊になすべきことではないだろう。中国元の国際決済におけるシェアを高めるには、まず近隣諸国から信用できる国として認められ、支持される国になることが絶対不可欠である。フィリピンなどとの海上衝突を繰り返していては、近隣諸国の支持を得ることなどできるわけがない。反スパイ法強化や愛国法が必要なほど、中国指導部は政策に自信がないのか。国民の創意をくじく方向に向かっていては、経済力で米国を抜くのは不可能ではないか。