熊谷徹氏のドイツに関する著書から感銘を受けたことを何回かに分けて紹介する。ドイツに1951年に設置されて、外務省と7つの州政府の支援によって運営されているゲオルク・エッカート国際教科書研究所がある。創設者のゲオルク・エッカートはナチス政権下で社会の教師を務めた反省から、子どもたちの心に平和の理念を育むためには教科書を変えることが必要だと考えた。国際教科書研究所は、歴史学者、教師、教科書執筆者による国際会議を開催し、互いの教科書の内容の点検討議をする。教科書会議はこれまでにポーランド、フランス、イギリス、ロシア、アメリカ、オランダ、デンマーク、ハンガリー、ルーマニア、イスラエル、チェコ、スロバキアで開催された。2006年にドイツとフランスで共通教科書を出版し、2020年にはポーランドと共通教科書を出版した。ナチスの犯罪から目をそらさない、ナチスの犯罪を忘れない、ナチスのような狂気の集団を二度と出現させないというドイツ国民の意思の表れである。日本が韓国や中国や東南アジアの諸国と学校で教える教科書について点検討議するなどということがありえようか。過去を直視し、過去をごまかさず、過去を反省し、過去を乗り越えようとするドイツ国民の強靭な意志に深い感銘を受けた。