ドイツが福島原子力発電所爆発事故によって、国内にある原子力発電所をすべて2022年末までに停止すると決定したのは、福島の事故からわずか4カ月後のことである。その後ロシアのウクライナ侵略に起因して、ロシアからの輸入に大方頼っていた天然ガス、原油などのエネルギー源の輸入がストップし、それが原因で消費者物価指数が12.8%も上昇したが、ドイツは原子力発電所全廃方針を変えなかった。ドイツ経済の苦境が続いているのは、そのためである。ドイツの苦境は、最近ではフォルックスワーゲンが国内工場の稼働をやめると言い出す状況さえ引き起こしている。すべてエネルギー価格の高騰、価格下げ止まりが原因だ。ロシアウクライナ戦争という異常事態であるから、原子力発電を再開しても誰も文句を言うはずはないのに、そのようにせず経済苦境に耐え続けている。福島事故の処理がいつ終わるかわからない状態なのに、原発推進に方針転換した日本との大きな違いである。そこに見えるものは、国民の幸福を第一に考えるドイツの政権と、企業の利益増大を第一に考える日本の政権との決定的な違いである。ドイツでは国民の幸福が、企業の利益よりも優先し、政権政党が交代してもそれがぶれない。さすがベートーヴェンの国であり、ブラームスの国であり、ワーグナー、バッハ、メンデルスゾーン、カノンのパッヘルベルの国である。またマルティン・ルターの国でありカント、カール・マルクス、マックス・ウェーバー、ハイデッガーの国である。ガウス、ケプラー、レントゲン、グーテンベルクさらにアインシュタインの国である。ゲーテ、ヘルマン・ヘッセ、トーマス・マン、ハインリヒ・ハイネ、ニーチェの国である。シーボルト、ロベルト・コッホの国である。どちらの国民が幸せか、言を俟たない。