展望日本 その2 2023年12月24日

米国債10年物の利回りが5%を付けたのは10月20日過ぎである。それから2カ月も経たないうちに1%ほど下げ、現在3.9%前後である。政策金利の引き上げうち止めとみた市場は、米国債買いに一斉に動き出し、あっという間に利回りは1%ほど下がってしまった。FRBは市場を驚かせて混乱を引き起こすことを極度に恐れているから、市場追認政策が常態化している。案の定12/12 12/13のFOMCでは先月に続き政策金利を据え置いた。市場が金利引き上げうち止めと騒げばFRBは追認するのである。しかも来年の金利引き下げに言及して、国債買いの後押しまでした。米政府の高水準の国債発行による金利上昇にブレーキをかけ、米政府を応援することも意図したのであろう。現在の3.9%前後の水準は、今年の7月頃であったから、3カ月で1%ほど上がり2カ月弱で1%ほど下げたということだ。米国金融市場は、市場を変動させてカネを稼ごうとする連中のルツボで、何とか市場を変動させてカネを稼ごうと必死なのである。私の読みは、しばらくは現行水準の政策金利や4、5~5%辺りの利回りが続くだろう、であったが完全に外れてしまった。この市場の急流に慌てふためいたのは日本銀行であろう。12/18 12/19の政策決定会合はなんにもなしで終わった。市場の急流に手も足も出なかったのであろう。マイナス金利で円安誘導して、日本経済を何とかもたせているのに、世界的に国債利回りが急激に下がりだし、円が10円ほどあっという間に戻ってしまった。円安が急速で、円買い介入がささやかれていたのはたった2カ月ほど前の10月のことである。まだ米国EUは利下げしたわけではなく、せいぜい早くても来年の3月あたりと言われている段階での円の10円ほどの戻りである。円買い介入で戻ったのとはわけが違う。実際に利下げが始まれば、日銀は利上げをしていないから、利下げで円安を維持することはできない。政策金利差が縮小し、国債利回り差が縮小し、その結果円の戻りが続くと見るのが必定である。当然円安に胡坐をかいていた企業は、決算利益予想を減額し出すだろう。これまでの流れが徐々に逆転し始める。それは、日銀の円安誘導政策による大幅な物価上昇で、とことん苦しめられている消費者にとって朗報である。少なくとも今以上の円安増税政策の可能性はなくなったとみてよいからである。物価は現状の高止まりがしばらく続くが、いずれ値上げ競争が終焉し、値下げの小波が起き、これまでとことん物価上昇、生活水準の底なしの下落に苦しめられ続けてきた大多数の国民は、一息つける状況になるであろう。それは、円安増税政策で苦しめられている大多数の国民にとってよいことだ。

タイトルとURLをコピーしました