日本の円安誘導政策が続けられなくなる状況として考えられる事態の一つは、米国が円安誘導政策にNOと言う時だ。NOと言う可能性でもっともありそうなのは、円安で急増している日本の対米自動車輸出による販売競争によって、米国自動車メーカーの業績が悪化する事態が起きた時である。2023年4月~9月の対米自動車輸出台数は、87万4337台で前年同期比26.9%増であった。米国の代表的な自動車メーカーの米ゼネラル・モーターズを見てみよう。GMの業績は今のところ好調で、7~9月の売上高は441億ドルとアナリスト予想を約10億ドル上回り、1株当たり利益は2.28ドルと、市場予想の1.84ドルを上回っている。その要因の一つに挙げられているのが、販売価格の記録的な高さである。スト絡みで2億ドルの損失を計上したにもかかわらず、利益と売上高はいずれも予想以上と絶好調と言っていいほどだ。そのGMは4年半で25%の賃上げをすることでUAW=全米自動車労働組合と合意した。一方トヨタ自動車も賃上げを表明し、賃上げ幅は最大9%超。ロイター通信によると、賃上げは来年1月からで時給が最大まで昇級する期間は4年ということだそうだ。賃上げは生産コストを引き上げ利益を減少させる。記録的な高さの販売価格はインフレが原因だ。その価格が維持できなければ、利益は減少する。CPIは峠を越し月を追って下がってきている。いずれ日本からの輸入車急増で販売競争が熾烈になるだろう。そうなれば円安が問題として浮上するだろう。