接戦予想のアメリカ大統領選挙はトランプ氏の大勝で終わった。劣勢から挽回してのトランプ氏の勝利だから、大勝と言ってよい。資金面ではハリス氏のほうが圧倒的に多かったにもかかわらず、トランプ氏が勝ったのは、ハリス氏への資金の出し手の超富裕層の考えと、その他大勢の庶民の考えが大きく乖離していることを証明している。超富裕層にとっては何をしでかすかわからないトランプ氏よりも、バイデン氏の政策を継続するであろうハリス氏のほうが、自分等の利益に貢献するだろうから、ハリス氏を支持したのである。トランプ大統領になってよいことが一つある。トランプ氏が負けていたら、トランプ氏は負けを認めないから、米国内はトランプ派と反トランプ派で、大争いになり、その影響が世界に伝播し、あらゆる面で悪影響を与えただろう。ハリス陣営はまともな考えを持った人たちで、負けは負けと素直に認める良識を持った人たちだ。トランプ支持派のような狂気の者たちはいないから、混乱は起きないはずだ。これがトランプ大統領誕生の唯一の朗報である。さて、トランプ大統領でどう変わるか?
- ロシア・ウクライナ戦争は、終結に向かうだろう。米国がカネ・武器両面でのウクライナ支援を縮小するのは確実である。ウクライナはEUの支援だけでは戦争を継続できないだろう。トランプ大統領誕生の機に乗じて、戦争終結前に有利な状況を作り出そうと、ロシアは攻撃を一気に増加させて、しばらくは戦闘が激化するだろう。その後はロシア・ウクライナ戦争は無意味な戦争だから、自分が大統領になったら、ロシア・ウクライナの大統領を呼びつけて一日で戦争を終わらせると豪語していたのは、トランプ氏のまったくの口から出まかせではないだろうから、戦争終結に向かうはずだ。戦争終結はウクライナ・ロシア国民に人生への希望をもたらすだろう。
- ロシア・ウクライナに反して、パレスチナ、ヨルダンは更なる大苦境に陥るだろう。トランプ氏のイスラエルへの肩入れはバイデン氏の比ではない。イスラエル賛美のトランプ大統領になって、イスラエルの更なる無差別殺戮が激化し、最終的にパレスチナ・ヨルダンはイスラエルに征服され、それこそイスラエルあるじによる奴隷状態にまで貶められる可能性が大である。国連にできることはトランプ大統領になってさらに少なくなり、この問題に関しては存在意義が消滅するだろう。米国が資金を出さないと言えば、途端に機能しなくなるのが国連だ。国連は各国の資金拠出で運営されている機関で、米国は世界最大のカネの出し手である(2022年~2024年に係る分担率22%)。国連職員は各国の出すカネで食っている。生活費の出し手には誰も逆らえない。トランプ大統領は自分の意に従わない国連にはカネを出さないと強迫するだろう。
- 米国対イラン問題は、ことによると中東の大混乱を引き起こす可能性がある。トランプ氏は大のイラン嫌いで、イランを嫌悪している。ネタニヤフ政権にイランの核施設を攻撃しろ!などとけしかける可能性がある。実際に起きたらどういう混乱が起きるか予想できない。トランプ氏の暴走を止められる人物がいるか?トランプ氏によいしょする人間で閣僚を固めるのは間違いない。前回のように賢明な閣僚が存在しなければ(今回は前回と違って、賢明な人はトランプ政権に加わらないだろう)とんでもない事態が勃発することを覚悟したほうが良い。トランプ氏は78歳だ。常軌を逸する可能性が高い。株式市場はトランプ氏の大判振る舞い予想で舞い上がっている。暴落を覚悟して備えを怠らないことが賢明である。
- 米国対中国は前回のトランプ政権の比ではない異次元の敵対関係になる可能性がある。トランプ氏は中国に対する競争心が半端ではない。中国からの輸入品に60%の関税をかけるなどと豪語していた。前回のトランプ政権の輸入関税をバイデン政権は引き継いだだけでなく、半導体規制をはじめ更なる中国弱体化の規制を次々と打ち出してきたが、トランプ氏は現規制に倍する規制を打ち出してくるのは間違いない。中国経済は更なる弱体化に直面するだろう。既に前回のトランプ政権の中国からの輸入品に課した高関税の影響で、中国での生産をあきらめ他の国に生産拠点を移してしまった大企業は数多ある。これからのトランプ政権の中国敵視政策によって、更なる生産拠点の中国脱出が起こるだろう。中国への外国資本による投資は激減し、中国の経済停滞が重症化するに違いない。日本の輸出先の第一位は中国で全輸出金額の20%を超えている。トランプ政権の中国敵視政策は日本の輸出に大きな打撃を与えるだろう。中国の内需不振で、中国製品が高関税の米国以外のアジア諸国にあふれかえる可能性大で、アジアで競合する日本に価格競争による大きな打撃を与えるだろう。
残念ながらトランプ大統領で世界は再び混迷の時代に突入する。ロシア・ウクライナ戦争終結以外の私の予想が外れることを願う。