去年の12月に発足したイスラエルのネタニヤフ政権は、6党の連立政権で、その中に前回選挙より議席を倍以上に増やした宗教シオニズムを掲げる極右政党の連合「宗教シオニズム・ユダヤの力」が入っている。宗教シオニズムはユダヤ人による「約束の地(イスラエルの地)」に対する支配の強化がメシアの到来を早めると考えるシオニズムの一形態で、ヨルダン川西岸の併合や入植活動の推進などを主張している。ネタニヤフ政権は発足直後に司法制度改革案を国会に提出した。その中で最も問題となっているのが、国会が過半数で最高裁の決定を覆すことができる「オーバーライド条項」である。三権分立を弱体化させる条項であり、現職の最高裁長官や法務長官ら法曹界は反対を表明し、1月初めから週末になると、テルアビブなど各地で大規模な反対集会やデモが行われていた。ネタニヤフ政権は窮地の状態に陥っていたのである。そのような状況の中で、今回のハマスによる攻撃が勃発した。これに対処するため挙国一致政権が樹立され、ハマスの攻撃によってネタニヤフ政権に対する批判は消失した。エジプトはイスラエルに対し、ハマスによる攻撃の可能性があることを、攻撃の約3日前に警告していた、と言われている。何度もアラブとの戦闘の苦難を乗り越えてきた周到なイスラエル軍が、対策を取らないはずがないのに、ハマスの拙劣な攻撃に対処できなかったのはなぜなのか?故意に対処しなかったのか?イスラエル軍が不意を突かれたなんて言っている者がいるが、戦闘状態が常態化している中で、イスラエル軍が不意を突かれるなんてことがありうるのか?いずれ歴史が真相を明らかにするだろう。イスラエル戦車に竹やりハマスでは、所詮勝敗は始まる前から分かっていることである。